もの忘れが不安な方へ
🌿 もの忘れと認知症の違い
「最近、名前が出てこない」「物を置いた場所を忘れた」——このようなことは、誰にでも起こる「もの忘れ」です。 しかし、こうした一時的な記憶の抜けとは異なり、認知症は脳の病気により記憶力や判断力が低下し、生活に支障をきたす状態を指します。 🔸 もの忘れの特徴 忘れていたことを後で思い出せる(例:忘れていた財布の置き場所を後で思い出す) ヒントを出すと記憶が蘇る(例:「昨日は何を食べた?」と聞くと思い出す) 日常生活には支障が少ない(会話や買い物、料理などを普通にこなせる) 🔸 認知症の特徴 忘れていたこと自体を忘れてしまう(例:財布をなくしたことを覚えていない) ヒントを出しても思い出せない(例:「昨日は何を食べた?」と聞いても思い出せない) 時間や場所の感覚がわからなくなる(例:今日が何日かわからない、自宅に戻れない) 慣れているはずの家事や操作が難しくなる(例:炊飯器の使い方がわからなくなる) 同じ話を繰り返す、言葉がうまく出てこない 判断力や理解力が低下する(例:お金の管理ができない、詐欺に遭いやすい) 🌸 わかりやすいポイント 「もの忘れ」は、年齢による自然な変化の一部。 「認知症」は、進行性で生活に影響を及ぼす脳の病気です。 🔹 もの忘れ → 生活に支障なし、ヒントで思い出す 🔹 認知症 → 生活に支障あり、ヒントでも思い出せない 🚨 気になる症状があれば 日常生活での「困った」が増えてきた 家族や友人から「最近おかしい」と言われる そんな時は、早めのご相談をおすすめします。 森クリニックでは、問診や検査、必要に応じた画像診断を行い、適切な診断・治療・サポートを行います。
🧩 認知症の種類と特徴
🧩 認知症の種類と特徴 認知症にはいくつかのタイプがあり、それぞれ特徴的な症状や進行パターンがあります。ここでは代表的な認知症の種類と特徴をご紹介します。 🌿 アルツハイマー型認知症 認知症全体の約60~70%を占める最も一般的なタイプ 初期は記憶障害(特に最近の出来事を忘れる)が目立つ (例:何度も同じことを聞く、直前の会話を忘れる) 時間や場所がわからなくなる(見当識障害) (例:自宅に帰れない、日付や曜日を取り違える) 言葉が出にくくなる(失語) (例:知っているはずの物の名前が出てこない) 物の使い方がわからなくなる(失行) (例:炊飯器の使い方を忘れる) 進行に伴い、食事・排泄・着替えなど日常生活に支障が出る 🌿 レビー小体型認知症 認知機能の変動と幻視が特徴的 認知機能に日による変動がある (例:会話や理解が良い日と悪い日がある) リアルな幻視(人や動物、虫など)が見える (例:いないはずの人影を「いる」と言う) パーキンソン症状(手の震え、動作緩慢、姿勢の前屈) 転倒しやすい 睡眠中に大声を出したり体を動かす(レム睡眠行動障害) 🌿 前頭側頭型認知症 性格変化や行動異常が初期から目立つタイプ 社会的ルールを守れなくなる (例:他人に暴言を吐く、買い物で万引き) 同じものを食べ続けるなどの常同行動 感情のコントロールが難しくなる 記憶障害は初期には目立たず、会話は普通にできることもある 言語障害(言葉が出ない・理解できない)が初期に出ることも 🌿 血管性認知症 脳梗塞や脳出血が原因。段階的な進行が特徴 脳血管障害の後に発症(手足の麻痺やしびれを伴うことも) 症状が階段状に悪化(脳血管イベントごとに認知機能が低下) 記憶障害より、注意力・判断力の低下が目立つ 感情のコントロールが難しくなる(うつ状態、易怒性) 歩行障害や尿失禁が同時に見られることも多い 📝 ポイントまとめ 種類代表的な症状 アルツハイマー型記憶障害 → 言語・行動障害へ進行 レビー小体型幻視・認知の波・パーキンソン症状 前頭側頭型性格変化・行動異常(記憶は初期保たれる) 血管性認知症階段状進行、脳梗塞後、注意・判断力低下 🚨 「あれ?」と思ったら早めのご相談を 気になる症状がある場合は、進行を防ぐためにも早期の診断と対応が大切です。当院では問診・検査を通じて、認知症のタイプをしっかり見極めます。
検査・診断・フォロー
🏥 当クリニックでの診断と治療
森クリニックでは、もの忘れや認知症に関するお悩みに対し、的確な診断と継続的なサポートを行っています。 📋 検査・診断 認知機能検査(HDS-R、MMSE など) 採血によるスクリーニング検査(※一部自費) 画像検査の紹介(MRI、SPECT など) 必要に応じて、認知症のタイプ・重症度を総合的に評価します。 🤝 専門医療機関との連携 岡山県内の専門医療機関と連携し、より高度な診断や治療が必要な場合には迅速にご紹介します。 💊 治療 薬物療法(コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬、抗パーキンソン病薬 など) 非薬物療法(リハビリテーション、生活指導、家族支援) 📝 当院の特徴 認知症スクリーニング検査(認知機能検査・採血評価)を実施(※一部自費) 必要に応じた画像検査の手配 内服薬決定と日々の継続処方 専門病院への紹介も可能(最新治療の希望に対応) 介護保険申請用の「主治医意見書」作成も承ります
🌿 認知症連携実績病院(順不同)
東部脳神経外科病院 公益財団法人 慈圭会 慈圭病院 公益財団法人 林精神医学研究所 岡山ひだまりの里病院 医療法人 林道倫精神科神経科病院 川崎医科大学 高齢者医療センター 一般財団法人 河田病院 日本赤十字社 岡山赤十字病院 精神神経科 🌿 上記以外にも、患者様のご希望に応じた連携医療機関へのご紹介が可能です。お気軽にご相談ください。
🌿 血液検査でわかる物忘れ検査(MCI検査)を導入しています
近年、国内外で認知症の患者数は増加傾向にあり、特に日本では高齢化の進展とともに、その数が急速に増えています。地域においても「物忘れ」や「認知機能低下」に関する相談が増えており、早期発見と対応の重要性が注目されています。 中でも「MCI(軽度認知障害)」は、認知症の前段階として注目されており、進行を抑えるためには早期のスクリーニングと適切な対応が不可欠です。最近では、このMCI検査がテレビなどのメディアでも取り上げられ、一般の方々の関心が高まっています。 当院では、アルツハイマー型認知症のリスクを血液検査で手軽に調べる「MCI検査」を自由診療にて導入しています。認知症になる前の段 階でリスクを把握し、生活改善や予防、早期治療に役立てることが可能です。ご自身の健康維持のために、ぜひこのスクリーニング検査をご活用ください。 検査内容は2種類 ● MCI検査(採血量 7ml) アルツハイマー病の原因物質と関連のある3種類のタンパク質を測定します。 この検査で、アルツハイマー病や軽度認知障害のリスクを調べることができます。 ● APOE遺伝子型検査(採血量 5ml) アルツハイマー病に関連する遺伝子型(APOE遺伝子)を調べる検査です。 特に、APOE遺伝子の「ε4」を多く持つ方はアルツハイマー病発症リスクが高いとされています。 🏥 検査料金(別途消費税) MCI検査:25,000円 APOE遺伝子型検査:20,000円 ※ 検査結果報告までにはおよそ2週間かかります。ご了承ください。
🌿 認知症進行予防のために
👤 本人ができること 👪 家族・介護者ができること
🌈 共通して大切なこと(認知症タイプを問わず)
👤 【本人ができること】 バランスの良い食事 (野菜・魚・果物中心、塩分控えめ) 適度な運動(散歩、体操、軽い筋トレ)で血流を良くする 趣味や会話、脳トレ(読書、計算、パズル)を習慣にする 十分な睡眠とストレス管理(深呼吸、リラックス音楽) 規則正しい生活リズム(決まった時間に起床・食事・就寝) 医師の指示に従い、服薬と健康管理(血圧・血糖)を続ける 👪 【家族・介護者ができること】 本人の自立を尊重しつつ、困った時に支援(できることは任せる) 一緒に運動や会話、趣味を楽しむ(外出・散歩の機会づくり) 食事や服薬管理、予定のメモ・カレンダーでサポート 家の安全対策(転倒防止、火の元確認、見守り機器導入) ストレスをためない工夫(介護サービス、地域包括支援センターの活用) 医師や専門機関と連携し、相談や情報収集を積極的に行う
🌿 認知症タイプ別 進行予防の工夫
🧠 アルツハイマー型認知症
👤 本人 バランスの良い食事(DHA・EPAを含む青魚、抗酸化物質を意識) 趣味や活動(手芸、料理、旅行の写真整理など)を日課に 毎日15分程度の脳トレ(漢字パズル、計算、クロスワード) 定期的な運動(散歩、ラジオ体操、軽い筋トレ) 自分の 得意分野を活かして家事や趣味を続ける 規則正しい生活リズム(起床・就寝時間、食事時間) 👪 家族 簡単な予定表を作り、毎日見せる(今日の予定、夕食メニュー) 「できること」を尊重し、本人の役割(掃除、洗濯物たたみなど)を持たせる 失敗しても否定せず「大丈夫」と伝え安心感を与える 一緒に写真アルバムを見ながら昔話をする 夜間の徘徊を防ぐ工夫(玄関に鈴をつける、寝室を安全に) 家の中の段差や危険箇所を見直す
👁️🗨️ レビー小体型認知症
👤 本人 調子の良い日に合わせて活動(天気の良い日、体調が良い日) 幻視や混乱時には驚かず、安心できる音楽や香りを用いる 転倒予防のための下肢筋力トレーニング 睡眠環境を整え、夜間の安心を確保(暖色照明、静かな音楽) 👪 家族 幻視については否定せず「大丈夫」と受け止める 転倒防止のため手すり・滑り止めマット設置 外出はゆっくりペースで、無理なく短時間から 睡眠リズムが崩れないよう、日中の適度な活動を促す パーキンソン症状(動作の緩慢さ)を理解し、急がせない 服薬管理を徹底(複数の薬剤を把握し、時間を守る)
🗣️ 前頭側頭型認知症
👤 本人 できる範囲の役割(ごみ出し、洗濯物干し)を継続 怒りやすい場合は一呼吸おいてリラックスする 自分の好きな音楽を聴く、穏やかな趣味を取り入れる 日課として散歩や簡単な家事を行う 👪 家族 突発的な怒りや反社会的行動に冷静に対応(口論を避ける) スケジュールを定型化し、日常のリズムを守る 社会的マナー逸脱は、周囲に丁寧に説明 生活空間をシンプルに整え、混乱を防ぐ 単調な作業(折り紙、塗り絵)を一緒に行う
🚶♂️ 血管性認知症
👤 本人 生活習慣病の管理(減塩食、血圧・血糖・コレステロール管理) 禁煙・節酒を意識、無理なく取り組む 軽い運動(散歩、ストレッチ)を習慣にする 自分のペースでゆっくりと活動する(急がない) 👪 家族 健康管理(血圧・血糖チェック、薬の管理)を支援 食事の工夫(減塩・栄養バランス)、誤嚥予防を意識 転倒防止の工夫(手すり、滑り止め、段差解消) 判断力低下に備え、重要な決断は一緒に行う 外出は無理なく、散歩や日光浴を一緒に楽しむ
🌿 認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応法 ~本人と家族ができる工夫~
認知症になると、「怒りっぽい」「暴力をふるう」「物を盗られたと言う」「徘徊する」など、行動や感情のコントロールが難しくなることがあります。これらを総称して**BPSD(行動・心理症状)**と呼びます。
BPSDはご本人も「自分でもうまくいかない」と戸惑い、周囲のご家族も「どう接したらいいのかわからない」と悩みが深まります。しかし、対応次第で症状が落ち着くことも少なくありません。
ここでは、ご本人ができる工夫とご家族が取れる具体的対応策を詳しくご紹介します。
🧑🦳 ご本人ができる工夫
1. 気持ちを落ち着ける習慣を作る 深呼吸、ストレッチ、好きな音楽を聴いてリラックス 誰かと話す、笑う、ペットと触れ合う時間を持つ 日記を書いたり、ぬり絵や折り紙など手先を使う趣味を持つ 2. 生活リズムを整える 毎日決 まった時間に起きて寝る習慣をつける 朝日を浴びて体内時計をリセット 夜間にトイレに行きやすい場合、寝る前の水分は控えめに 3. できることは続ける 洗濯物をたたむ、簡単な料理を作るなど、役割を持つ 家族と一緒に買い物や散歩に行く 季節ごとの行事(例えばお花見や節分)を楽しむ
👪 ご家族・介護者ができる対応
① 否定しない・共感を示す 妄想(「お金を盗られた」など)には、「そんなことない」と否定せず、「心配だね」と寄り添う。 記憶違いや作り話に対しても、「そうなんだね」と受け止める。 怒りや暴力には、「今は落ち着こう」と一緒に呼吸を整える。 ② 安心できる環境づくり 部屋に好きな音楽や家族写真を飾る。 迷いやすい場所(トイレ・玄関)に大きな表示や矢印をつける。 部屋の温度・湿度・照明を快適に保ち、不快感を減らす。 室内を片付け、転倒防止マットを敷く。 ③ 日常の流れを安定させる 起床・食事・入浴・就寝時間を毎日同じにする。 1日の予定をホワイトボードなどに書き出して共有。 食事やトイレ誘導は声掛けと一緒に手を添える。 ④ 気分転換を取り入れる 好きなテレビ番組や音楽でリラックス。 簡単な家事や作業(洗濯物たたみ、新聞の整理)を手伝ってもらう。 天気の良い日は散歩や外気浴を勧める。 季節のイベント(お花見、節分、誕生日)を一緒に楽しむ。 ⑤ 夜間の不安・徘徊対策 玄関や勝手口にセンサーライトや施錠を設置。 寝室に安心できる小さなライトを置く。 夜間のトイレや水分補給を済ませる。 日中の運動量を増やし、夜はぐっすり眠れるようにする。 ⑥ 暴言・暴力への対応 叱らず、まずは本人の安全を確保する。 原因(体調不良、環境の変化、不安)を探る。 落ち着いたら「大丈夫だよ」と声掛けし、別のことに気を向ける。 ⑦ 介護者自身の心と体を守る 「頑張りすぎない」「完璧を目指さない」気持ちを持つ。 家族・友人・ケアマネージャーに話を聞いてもらう。 デイサービス、ショートステイ、訪問介護を積極的に利用。 自分の時間(趣味、休憩)を意識的に作る。 ⑧ 専門家や支援制度を活用する 認知症専門医の診察、薬の調整を相談。 地域包括支援センターや介護相談窓口を利用。 認知症カフェや介護者向けサロンに参加し、情報交換や仲間作り。 ⑨ 不安や混乱への対策 窓やカーテンを閉めて外の刺激を減らす(不安の軽減)。 音楽や好きな香り(アロマ)でリラックス空間を作る。 驚かせないよう、急に声をかけず、視界に入る位置から話しかける。 メモやカレンダーを活用して「何をする時間か」を伝える。 ⑩ 繰り返しの訴えや同じ質問への対応 「さっきも聞いたよ」と注意せず、同じように繰り返し答える。 「今は〇〇だから大丈夫だよ」と穏やかに説明する。 根気強く付き合うことで安心感を持ってもらう。 ⑪ トイレや排泄トラブル対応 トイレの場所をわかりやすくする(ドアに大きな表示)。 トイレの声かけは「行こうね」と一緒に誘導。 尿漏れには「大丈夫だよ、誰にでもあること」と声をかける。 排泄の失敗を責めず、穏やかに着替えを促す。 ⑫ 食事・栄養面の工夫 噛みやすく飲み込みやすい食事を用意する。 好きな食べ物を取り入れ、楽しみを持たせる。 食事中はテレビを消し、静かな環境でゆっくり食べる。 水分補給をこまめに声かけする(脱水予防)。 ⑬ 金銭管理や物の置き忘れ対策 お金や大事な物は家族が管理し、「どこにある」と説明する。 物を置く場所を固定し、決まった場所に置く習慣をつける。 探し物が続く場合は一緒に探して安心させる。 ⑭ 家族内の役割分担 介護を一人で抱えず、家族・親戚で役割分担する。 ケアマネジャーに相談して外部サービスを利用する(デイサービス、訪問介護)。 家族同士で情報共有し、対応方法を統一する。 ⑮ 介護者自身のメンタルケア 自分の時間を作る(趣味・外出・友人との交流)。 介護の愚痴を言える仲間やカウンセラーを見つける。 「今日はこれだけできた」と自分を褒める習慣をつける。 自分の体調(睡眠・食事)管理を忘れない。 ⑯ 周囲の理解を得る工夫 近所や親戚に「認知症でこういう症状がある」と説明する。 認知症カフェや地域の勉強会に参加し、情報を共有する。 知識を持っていることで、周囲の誤解や偏見を減らす。 ⑰上記に取り組めるかどうか、どこまで対応出来るかはこれまでの人生の歩みの中で患者本人との関係性の歴史も大きく影響します。これ以上は無理だと思ったら施設への入所などをケアマネジャーに相談する(ご自身が病まないように注意しましょう)。
阿部式BPSDスコア結果を基にした薬物療法の選択基準
📝 阿部式BPSDスコア
🌟 設問と評価(各項目 0~3点)
※ 評価基準:0=なし、1=軽度(週1回程度)、2=中等度(ほぼ毎日)、3=重度(1日に何回も)
項目番号質問内容 1妄想(物を盗られた、悪口を言われた、等)がありますか? 2幻視(見えないものが見える、虫が見える等)がありますか? 3徘徊(無目的に歩き回る、家から出る等)がありますか? 4興奮(怒りっぽい、暴言、暴力)が見られますか? 5うつ症状(気分の落ち込み、無関心)が見られますか? 6夜間せん妄(夜中に混乱、落ち着かない)が見られますか? 7不適切な性行動(露出、性的言動)がありますか? 8食事や排泄の失敗(拒否、無関心、失禁)が見られますか? 9常同行動(同じ動作を繰り返す、手を叩く等)が見られますか? 10依存的行動(何度も呼ぶ、常に側にいようとする)が見られますか?
🧠 阿部式BPSDスコア結果を基にした薬物療法の選択基準
🌿 1️⃣ スコアの合計点による重症度分類(目安) ①0~5点:軽症(非薬物療法中心) ➡ 生活環境調整、リハビリ、介護者教育、デイサービス利用を優先。薬物療法は原則避ける。 ②6~15点:中等症(非薬物療法+必要に応じて薬物療法) ➡ 環境調整を行った上で、症状によっては薬物療法を検討。薬剤は低用量から慎重に導入。 ③16点以上:重症(薬物療法導入を積極的に検討) ➡ 生活環境調整と並行して、症状に応じた薬物療法を開始。必要に応じて精神科専門医相談。 🌿 2️⃣ 症状別・薬剤選択の目安 主症状推奨薬剤例(初期量→目安量) ①妄想・幻視・幻覚: ドネペジル(3mg→5-10mg)、メマンチン(5mg→20mg)、リスペリドン(0.25mg→1mg以下)、クエチアピン(12.5mg→25-50mg) ②興奮・攻撃性・暴力: リスペリドン(0.25mg→1mg以下)、クエチアピン(12.5mg→50mg)、抑肝散(顆粒1包→3包) ③うつ・無気力: セルトラリン(25mg→50-100mg)、ミルタザピン(7.5mg→15-30mg) ④夜間せん妄・不眠: トラゾドン(25mg→50mg)、クエチアピン(12.5mg→25mg)、抑肝散 ⑤不適切な性行動: リスペリドン、クエチアピン(上記用量)、必要に応じて内服制限を検討 ⑥常同行動・依存環境調整優先、薬物療法は極力避ける。必要時のみ低用量リスペリドン等。 🌿 3️⃣ 導入時の注意点 少量・単剤から開始:副作用リスクを最小限に抑える(特に抗精神病薬の錐体外路症状、ふらつき)。 非薬物療法の併用:薬物療法のみでの解決を目指さない。生活環境の改善、介護者支援と並行実施。 定期的な評価と見直し:導入後1~2週間で効果と副作用を評価。必要に応じて増量・減量・中止。 高齢者特有のリスク:認知症患者は薬物過敏性があるため、常に「最低量・最短期間」が原則となります。
🌿 BPSD(認知症の行動・心理症状)の薬物療法についての大切なお知らせ
🌿 BPSD(認知症の行動・心理症状)の薬物療法についての大切なお知らせ 近年、認知症に伴う「イライラや興奮」「妄想や幻視」「夜間の徘徊」などの行動・心理症状(BPSD)に対し、薬物療法の導入をご希望されるご家族やご施設さまが増えています。 しかし、BPSDの薬物療法は決して軽い治療ではありません。高齢の認知症患者さんにとって、抗精神病薬や睡眠薬などの使用は、脳卒中や心臓病、転倒・骨折、そして時には寿命に影響を及ぼすリスクがあることが知られています。特に、認知症の方は薬に対する感受性が高いため、少量でも副作用が出ることがあります。 そのため、当院では 「まずは薬を使わない方法(環境調整、リハビリ、生活支援)」を優先 しています。それでも症状が生活や安全に大きく支障をきたす場合に限り、慎重に薬物療法を検討します。薬の使用は「最小限・短期間」で、常に効果と副作用を見極めながら進めます。 ご家族の皆さまには、薬物療法はリスクを伴う治療であることを十分にご理解いただき、覚悟を持ってご相談いただくことをお願いいたします。 「薬を使えばすぐに良くなる」という簡単な治療ではなく、むしろ 「副作用を起こすリスクを取ってでも生活の質を守る必要がある場合」にのみ使う治療 であることを、ぜひご理解ください。 私たちは、患者さんとご家族の思いを大切にしながら、最善の治療を一緒に考えていきます。お気軽にご相談ください。
認知症の理解を深める



