🩺【嘔吐・下痢症、腹痛について】
【嘔吐・下痢について】
嘔吐や下痢は、主にウイルス性胃腸炎で起こることが多く、発熱や腹痛を伴うことがあります。
多くの場合は数日で自然に改善しますが、原因はさまざまで、症状によっては別の病気が隠れていることもあります。
【ウイルス性胃腸炎の特徴】
・急な吐き気
・水様性の下痢
・軽度の発熱
・お腹のゴロゴロ感(腹部不快感)
・倦怠感
ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルスなどが原因となります。
【典型的な胃腸炎として判断しにくい症状】
次のような場合は、胃腸炎以外の病気を考える必要があります。
・嘔吐だけが24時間以上続く
・下痢が全くない
・腹痛が極端に強い
・血便がある
・頻回の水様下痢がない
・高熱が続く(38度以上)
虫垂炎・腸炎・膵炎・胆嚢炎・心筋梗塞など、消化器以外の病気の可能性もあります。
【腹痛について】
胃腸炎の腹痛は比較的軽いことが多いですが、
次の症状がある場合は注意が必要です。
・右下腹部の痛み(虫垂炎の可能性)
・背中に抜ける痛み(膵炎など)
・刺すような強い痛み
・痛みが徐々に強くなる
痛みがある程度強い場合は早めの受診が必要です。
【嘔吐の注意点】
・水分が取れない
・飲んでもすぐ吐く
・口が乾く、尿が少ない(脱水)
・ぐったりしている
・血を吐いた
特に脱水は最も注意すべきポイントです。
【下痢の注意点】
・水のような下痢が続く
・血便
・黒い便
・発熱を伴う
・下痢が長引く
重症の細菌性腸炎や他の消化器疾患が隠れていることがあります。
【抗生剤が必要になる場合】
胃腸炎の多くはウイルス性で抗生剤は不要です。
ただし、次のような場合は抗生剤が必要になることがあります。
・高熱(38度以上)
・強い腹痛
・6回以上の下痢
・血便
・脱水症状
・基礎疾患(人工関節・人工弁・透析など)
・海外渡航歴がある
カンピロバクター腸炎など、細菌性腸炎の可能性があります。
【自宅での対処】
・まずは水分補給を最優先
・経口補水液(OS-1など)が有効
・食事は無理にとらず、消化のよいものから
・乳製品、油もの、刺激物は避ける
・十分な休養をとる
嘔吐が強い時は、無理に食べる必要はありません。
【受診をすすめする場合】
・嘔吐が続き水分がとれない
・尿の量が明らかに少ない
・高熱が続く
・血便
・激しい腹痛
・ぐったりしている
・高齢者、子ども、基礎疾患のある方
・症状が3日以上改善しない
早めの受診で重症化を防ぐことができます。
【腹痛について】
「おなかが痛い」と一口に言っても、その原因はさまざまです。
一過性の軽い腹痛から、すぐに救急病院受診が必要な病気まで含まれます。
おなかの痛みは、
・発症のしかた(急に?じわじわ?)
・痛みの場所(右上?みぞおち?下腹部?)
・痛みの性質(刺すような痛み?重だるい?差し込む?)
・年齢・性別
・一緒に出ている症状(発熱、嘔吐、下痢、血便など)
を組み合わせて考えることで、おおよその方向性を見定めていきます。
【腹痛でまず確認したいこと】
次のような点を整理しておくと診断の助けになります。
・いつから痛いか(何時間/何日前から)
・急に痛くなったのか、ゆっくり強くなってきたのか
・どこが一番痛いか(指で示せるかどうか)
・痛みの強さ(我慢できる〜冷や汗が出るほど)
・じっとしていると楽か、動くと楽か/悪化するか
・食事との関係(食後に悪化する、空腹時に痛むなど)
・発熱、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、血便の有無
・排尿時痛、血尿、頻尿の有無
・女性の場合:月経との関係、妊娠の可能性
・これまでに同じ痛みがあったか
これらの情報をもとに、「消化管の問題なのか」「胆のう・膵臓なのか」「泌尿器・婦人科の問題なのか」などを絞り込んでいきます。
【危険な腹痛のサイン(すぐに救急受診が必要な場合)】
次のような場合は、まず救急病院への受診を優先してください。
・急に襲ってくる激しい腹痛(冷や汗を伴うような痛み)
・お腹を少し触るだけでも強く痛む
・お腹が板のように硬くなっている
・血を吐いた、真っ黒な便(タール便)が出た
・止まらない嘔吐、全く水分もとれない
・高熱と強い腹痛が同時に出ている
・意識がもうろうとしている、ぐったりしている
・交通事故、転倒、ケガのあとに腹痛が出てきた
このような症状は、胃や腸の穿孔、腸閉塞、重症急性膵炎、重度の感染症(腹膜炎など)、解離性大動脈瘤などの可能性があり、当院のような一般外来では対応が難しいことがあります。
【痛みの“場所”から考えられる主な病気】
あくまで一例ですが、腹痛の場所からおおよその目安をつけることができます。
・みぞおち(上腹部中央)の痛み
胃炎、胃・十二指腸潰瘍、急性胃腸炎、急性膵炎、心筋梗塞 など
・右上腹部
胆石発作、胆のう炎、肝炎、肝うっ血 など
・左上腹部
胃の病気、膵炎、脾臓の病気 など
・おへその周り
小腸の病気、初期の虫垂炎、ウイルス性腸炎 など
・右下腹部
虫垂炎(盲腸)、回盲部炎、腸炎、尿路結石、婦人科疾患 など
・左下腹部
S状結腸炎、憩室炎、便秘、婦人科疾患 など
・下腹部全体
膀胱炎、前立腺炎、子宮・卵巣の病気、便秘、過敏性腸症候群 など
※実際には痛みの場所と原因臓器がずれることも多く、診察・検査と合わせて総合的に判断します。
【痛みの“発症のしかた”から見定めるポイント】
-
突然始まった強い痛み
・穿孔(胃・十二指腸潰瘍など)
・急性膵炎
・尿路結石
・卵巣茎捻転
・解離性大動脈瘤
などの可能性があります。 -
時間をかけて強くなっていく痛み
・虫垂炎
・胆のう炎
・腸閉塞
・局所的な炎症(憩室炎など) -
波のように強くなったり弱くなったりする痛み(疝痛)
・尿路結石
・腸閉塞(一部のタイプ)
・胆石発作 -
なんとなく重だるい痛みが慢性的に続く
・慢性胃炎
・慢性膵炎
・便秘
・過敏性腸症候群
・婦人科・泌尿器科の慢性疾患
・ストレスや自律神経の乱れ
【年齢・性別から考えるポイント】
年齢や性別によって、注意すべき病気も変わります。
・小児
ウイルス性胃腸炎、便秘、虫垂炎、腸重積 など
・若年〜中年女性
婦人科疾患(卵巣嚢腫、卵巣茎捻転、子宮内膜症、子宮外妊娠)、月経関連の腹痛
・中高年
胆石、膵炎、憩室炎、大腸がん、心筋梗塞、動脈硬化性疾患 など
・高齢者
腸閉塞、虚血性腸炎、胆のう炎・胆管炎、大動脈瘤、がん関連の痛み など
※高齢者では典型的な症状が出ないことも多く、注意深い評価が必要です。
【腹痛と一緒に出やすい症状】
・発熱
・嘔気、嘔吐
・下痢、血便
・便秘が続いている
・尿が出にくい、排尿時痛、血尿
・黄疸(皮膚や白目が黄色い)
・体重減少
・食欲低下
これらの組み合わせによって、
・感染症が主体なのか
・閉塞(詰まり)があるのか
・炎症か、循環(血流)の問題か
の方向性を判断していきます。
【当院で対応できる腹痛・すぐに大病院をお勧めする腹痛】
当院のような内科クリニックでは、
・ウイルス性胃腸炎
・急性・慢性胃炎
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍が疑われる腹痛
・過敏性腸症候群
・便秘関連の腹痛
・膀胱炎、軽い尿路結石が疑われる腹痛
・慢性的な腹痛の精査(血液検査、便検査など)
といった診療に対応しています。
一方で、
・激しい急性腹症(立っていられないほどの痛み、腹膜刺激症状)
・大量の吐血・下血
・重症の急性膵炎が疑われる場合
・高度の脱水を伴う嘔吐
などは、初期評価ののち、迅速に高次医療機関への紹介が必要になります。
【腹痛の背景にある生活習慣やストレス】
腹痛の中には、明らかな器質的疾患が見つからず、
・ストレス
・自律神経の乱れ
・食生活(脂っこいもの、暴飲暴食、不規則な食事)
・睡眠不足
・過度のカフェインやアルコール
といった要因が重なっているケースも少なくありません。
過敏性腸症候群(IBS)のように、
「検査で異常がないのに症状は強い」タイプの病気も存在します。
【受診の目安】
次のような場合は、クリニックへの受診を検討してください。
・数日以上続く腹痛
・何度も繰り返す腹痛
・市販薬で改善しない
・便通異常(便秘や下痢)が続く
・食後の腹痛が習慣的にある
・体重減少を伴う
・腹痛とともに不安やストレスが強い
「これは様子を見て良いのか」「受診した方が良いのか」迷われるケースも多いと思います。
気になる場合は一度ご相談いただければ、問診・診察・必要な検査をふまえて、今後の方針を一緒に考えていきます。
【嘔吐のみで受診される場合に考えられること】
「吐いてしまった」「食べるとすぐ吐く」「嘔吐だけで腹痛や下痢はない」
このように“嘔吐が主症状”として来院されるケースは少なくありません。
嘔吐は、胃腸の異常だけでなく、
脳・内耳・代謝・薬剤・精神的ストレス・妊娠など、
全身のさまざまな病気が背景にある可能性があります。
【嘔吐でまず確認したいポイント】
・いつから嘔吐が始まったか
・吐いた回数(1回のみ?複数回?)
・食後に吐くのか、空腹時か
・吐いた後に楽になるか
・発熱や下痢の有無
・頭痛、めまいの有無
・腹痛の有無
・薬の使用歴
・食中毒になりうる食事を摂ったか
・妊娠の可能性
・水分がとれているか、尿量はどうか
これらを組み合わせることで、さらに絞り込みが可能になります。
【嘔吐のみのときに考える主な病気】
嘔吐だけが目立ち、ほかの症状が少ない場合、
次のような病態が考えられます。
● 胃腸炎の初期
吐き気・嘔吐「だけ」で発症することがあります。
数時間後に下痢・腹痛が出てくることも。
● 食中毒(細菌性/ウイルス性/毒素型)
カレー・肉類・お弁当などの「常温放置食品」で多い。
毒素型は嘔吐のみが特徴。
● 自律神経性嘔吐(ストレス・過換気症候群など)
突然の強いストレス
緊張・不安
自律神経失調
で嘔吐だけが出ることも。
● 片頭痛による嘔吐(腹部症状主体型)
片頭痛の一部は、頭痛前後に嘔吐だけが目立つことがあります。
子どもに多い「周期性嘔吐症」も片頭痛の親戚のような病態。
● 内耳の異常(良性発作性めまい症など)
めまいが軽度でも、嘔吐だけが目立つケースがあります。
● 妊娠悪阻(つわり)
特に月経予定日以降の女性。
嘔吐のみで受診されて妊娠に気づく例もあります。
● 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
糖尿病患者で、強い口渇・多尿・体重減少があれば注意。
● 甲状腺機能亢進症
食欲はあるのに体重が減り、動悸・不眠を伴う。
● 薬剤性
抗生剤、痛み止め、鉄剤などは嘔吐の原因になりやすい。
● 腸閉塞(初期は嘔吐だけのことも)
腹痛が軽度でも、嘔吐が何度も続く場合には注意。
【年齢別のポイント】
● 小児
胃腸炎、頭痛・片頭痛に伴う嘔吐、髄膜炎、ケトーシス嘔吐症など。
子どもは嘔吐が“病気の出方”として多い。
● 若年〜中年
ストレス、自律神経症状、胃炎、食中毒、妊娠悪阻。
● 高齢者
腸閉塞、胆嚢炎、心筋梗塞、薬剤性(多剤の飲み合わせ)が多い。
【嘔吐の性質から見定める】
● 何度も繰り返し、飲んでもすぐ吐く
→ 胃腸炎、食中毒、腸閉塞
● 吐いたあとスッキリする
→ 胃炎、胃酸過多、片頭痛に伴う嘔吐
● 食後しばらくして吐く
→ 胃の運動低下、胃炎、胃十二指腸潰瘍
● 水分すらとれない
→ 重度脱水のリスクがあり、点滴が必要
● 朝方に吐き気が強い(女性)
→ 妊娠悪阻の可能性
● 頭痛+嘔吐
→ 片頭痛、髄膜炎(高熱を伴う場合)
【嘔吐とともに注意すべき危険な症状】
次に当てはまる場合は早めに医療機関へ。
・高熱が続く
・血を吐いた
・黒い便(タール便)
・激しい腹痛や背部痛
・ぐったりして反応が悪い
・水分がほぼとれない
・尿が出ない、極端に少ない
・胸痛や呼吸苦を伴う
・糖尿病の人で吐き気が強い
【当院で可能なこと】
・嘔吐の原因となる胃腸炎や胃炎の診断・治療
・点滴による脱水改善
・血液検査、尿検査
・妊娠の可能性の評価
・薬剤性嘔吐のチェック(服用薬の見直し)
・片頭痛による嘔吐の鑑別
・必要に応じた専門科、病院への紹介
嘔吐の背景は患者さんによって大きく異なります。
必要な検査・治療を組み合わせ、症状の改善をめざします。
【院長からのメッセージ】
嘔吐という症状は、胃腸炎にかぎらず、
頭痛、ストレス、薬剤、ホルモン、内耳、代謝異常など
多くの臓器が関わり得るため、“嘔吐だけ”でも慎重な評価が必要です。
「嘔吐だけだから様子をみるべきなのか」
「受診した方がよいのか」
と迷われる方も多いと思います。
特に、
・嘔吐が何度も続く
・水分が取れない
・尿が減ってきた
・ぐったりしている
といった場合は、早めの受診をおすすめします。
症状が軽いうちに適切な評価を行えば、
重症化を防ぎ、早期に回復できるケースが多いです。




