🩺【痛風・高尿酸血症について】
【痛風・高尿酸血症とは】
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が 7.0 mg/dL以上 になる状態です。
尿酸が関節に結晶として沈着すると 痛風発作 が起こります。
しかし、痛風は氷山の一角であり、
高尿酸血症自体が「腎臓」「心臓」「脳」の病気を進める危険因子 であることが近年明確になっています。
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── ★ 尿酸値が1上がると何が起こる?
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最新の疫学研究では、尿酸値が 1 mg/dL上がるごとに:
● 心不全リスク:28%増加
● 心筋梗塞リスク:16%増加
● 末期腎不全(透析)のリスク:8〜15%増加
● 全死亡リスク:8〜11%増加
と報告されており、尿酸値は全身の予後に強く影響します。
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── ★ 尿酸値と痛風発作の発生率
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● 尿酸 7.0〜7.9 mg/dL:年1%
● 8.0〜8.9 mg/dL:年3%
● 9.0〜9.9 mg/dL:年5%
● 10 mg/dL以上:年10%(10人に1人/1年で発作)
特に尿酸値 8.0 mg/dL以上は“危険ゾーン” とされ、
痛風だけでなく腎障害や心血管疾患の発症率が急上昇します。
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── ★ 高尿酸血症による腎臓への影響
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● 尿酸値 7.0 mg/dL以上
→ CKD(慢性腎臓病)発症率 1.7倍
● 尿酸値 8.0 mg/dL以上
→ 腎機能(eGFR)が年間 2〜3倍の速度 で低下
→ 尿酸値正常群の 約3倍 透析に至りやすい
● 尿酸値 9.0 mg/dL以上
→ 5年以内の尿路結石発症率 20〜25%
尿酸は“腎臓の静かな毒”とも呼ばれ、
痛風がなくても腎障害は確実に進んでいきます。
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── ★ 高尿酸血症と心血管疾患
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尿酸値が 7.0 mg/dL以上 の場合:
● 心筋梗塞:1.5倍
● 脳梗塞:1.4倍
● 心不全:2倍
● 高血圧発症:1.4倍
さらに
● 尿酸値が 9.0 mg/dL以上 では
心血管死亡率が正常群の 2.1倍
“尿酸が高い”=“血管の老化スピードが上がる”
ということがはっきりしています。
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── ★ 痛風発作は氷山の一角:沈黙の9割
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症状が出るのは尿酸によるダメージの わずか10% です。
残り90%は、
● 腎臓
● 血管
● 心臓
● 脳
に“静かに蓄積するダメージ”です。
痛風を起こしたことがある人は
「すでに尿酸の結晶が身体に沈着している」=ハイリスク群
と医学的に扱われます。
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── ★ 治療するとどうなる?
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適切な治療で尿酸値を 6.0 mg/dL以下 に下げると:
● 尿酸結晶の溶解開始(数か月〜1年)
● 痛風発作率:70〜90%減少
● 腎機能低下スピード:30〜60%改善
● 心血管イベント:20〜30%減少
● 尿路結石:50%以上再発抑制
「尿酸値が下がる=痛風が出ない」だけではなく、
腎臓・心臓・脳を守る予防治療 であることが重要です。
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── ★ 尿酸値だけを見てはいけません
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尿酸値は単なる数字ではなく、
● 生活習慣病
● 血管
● 腎臓
● 全身の炎症
の総合指標です。
森クリニックでは次を重視しています:
● 腎機能(eGFR、Cr)
● 血圧
● 血糖(糖尿病)
● 脂質(LDL・TG)
● 肝機能
● 体重・内臓脂肪
● 飲酒・食習慣
● 水分摂取
これらを包括的に管理し、“尿酸が下がり、腎臓と血管も守られる状態” を目指します。
尿酸値は
「痛風になるかどうか」
だけではなく、
将来、腎臓が守られるか、心臓・脳の病気を防げるか
を決める重要な指標です。
尿酸は“体質だから仕方ない”ではありません。
生活と治療で確実に改善できます。
痛風発作を起こしたことがある方、
尿酸値が高い方、
腎機能の低下や血圧の上昇が気になっている方は、
どうぞ早めにご相談ください。
【関連項目】
高血圧
糖尿病
脂質異常症
痛風・高尿酸血症
脂肪肝
慢性腎臓病(CKD)

